2017年2月12日日曜日

アラバキ わたしを  えらんで



2011年3月。


大粒の雪が降り続ける深夜の山形で、アパートの窓越しに白銀の外を眺めながら春のことをおもってた。
育ったまち 仙台市の荒浜を、大きな波がさらった。たくさんの命と一緒に。
続く余震と交通網の麻痺で仙台には戻れず、少し眠って起きたらツイッターをひらいて安否確認の手伝い。
いつの間にかキッチンの換気扇と地鳴り音の区別がつかなくなってた。
からだもこころも疲弊しきっていて、すぐ近くの死の気配に抗うように、
頭のなかで生成した春のにおいをたぐり寄せてた。




はじめてアラバキに行ったのは15歳のとき。
はじめての音楽フェスだった。
わたしにとってそのころの音楽は、希求で色彩で光明で宗教で教典で麻薬で、そして平面だった。
(例えば平面は、自分の部屋にあった青いMDコンポやウォークマン、ヘッドフォンの中とか、そういうものだったのだと思う。)

アラバキはそこからわたしを引きずりだした。

音楽は四方からふわふわと響いてて、森を歩けばまた違う音楽が聞こえてきた。
そのときに、音楽がこの世のものであることをはじめて知った。
“ここではない場所“に連れていってくれるものではなく、目の前の今この瞬間に音は鳴っていた。
身体と五感から立体を成して、それは世界の輪郭になった。
堆肥。湿った森。芝生。ひだまり。夕暮れ。
春のにおいはアラバキのにおい。
とじこめられた真冬の山形で、アラバキに行きたいなあ、と思った。




待ちわびた春が通りすぎて、その年のアラバキは夏にまで押した。
たった一度の夏季開催だった。
いつも通りのアラバキではなかったけれど、いつもと同じ夏だった。
あんなにも死の気配を感じなければ、いつもと同じ季節をかんたんに捉え損ねてやり過ごせたかもしれない。
テントの前で、ビールを買いに行った友達を待っていた。
真っ青な空にはトンボがたくさん飛んでいて、足下にはバッタが飛び交い、色や香りがとても濃かった。
草の上に裸足で立つと、からだがびりびりした。 
そこかしこから生命が湧いていた。
わたしも息をしていた。
この夏が訪れなかった人たちを思いながら。
風にのって、遠くのステージから音がきこえる。
あ、生き延びたんだ、その瞬間になぜか思えた。

そして、いつかアラバキに出れる人になりたいと思った。

DTMソフトの使い方すらよくわからなかったけど、仕方なかった。
そう思ってしまったのだから。
その夏を最後に、15歳から毎年欠かさずに足を運び続けたアラバキには行かなくなった。
友達に誘われても、友達が出ても、関係者チケットをもらっても、絶対に行かなかった。



 
2013年以降、毎年3月11日とお盆の時期に荒浜でライブをしている。
有志のボランティアやミュージシャンが毎年支え合いながらつくっているイベントで、わたしはその場所をとても大事にしている。
参加する度にあの日のことと、そこにある命のことを考える。
そしてここが、自分の音楽のかえる場所であるということを確認することができる。


行きたい場所と、かえる場所。
たくさんの気づきとすこしの勇気がここにはあって、2017年のアラバキ オーディションに応募しました。


本当はこういう場に出るのが苦手だし、自分のつくるものに自信を持てたことも一生のうちでトータル30秒くらいなのでどんな顔して色んな人に伝えればいいか今もわからないんだけど、自分だけが良ければ今まで通りCM音楽やBGMの仕事をもらって一生部屋で職業音楽家してれば良かったはずなんだけど、でも、心からわたしの音楽を愛してくれてる人たちがいることをわたしはもう知っていて。何かしてもしなくてもぜったい何か言われるんだから、自分が正しいと思うことをやりなよってデヴィッドボウイも言ってた。


アラバキに行きたい。
アラバキに出たいです。
なんでもいいからとにかくフェスに出たいな~みたいな他の誰かにはあげたくない。


オーディションは投票制でおよそ400組がエントリーしていて、ステージに立てるのは上位の2組です。ツイッターアカウントまたは新規で会員登録しなきゃいけなかったりとちょっと面倒なんですが、良かったら下のリンクから投票してください。投票は2月14日までです。
https://eggs.mu/project/arabaki_rock_fest17_2nd/artist/OM_73


・震災のあと電気が通じてすぐ、GarageBandの使い方を勉強するところ
から始めてつくった音をまとめた2011年のミニアルバム(右も左もわか
らないところを七尾旅人さんに拾われてリリースに至りました)
http://www.diystars.net/hearts/P00165.html


・なくなった町やモノの記憶を音楽で再構築して音楽のなかにとじこめて
永遠になればいいなとおもって2013年につくったアルバム
https://satonami.bandcamp.com/album/arahama-callings


・これまでやったことつくったもの
http://om-73.tumblr.com/
https://soundcloud.com/om73



あれから6年、今年27歳になります。
東北の冬は長くて、春が待ち遠しい。それはいつも通りに。





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